麻雀きょうぎ 第7回 ドラについての考察

 みなさんドラって好きですか?

 僕は好きですよ。……自分のところにくれば。他の人に行っていたら嫌いです!

 ドラが3つあるだけで、タンヤオのみが満貫になる。

 こんな理不尽なものはないと思っています。

 昭和の時代の『近代麻雀』に職種別のドラ事情を特集した記事があって、大相撲の力士同士で打つとドラ表示牌を常に2枚めくっているとか、競輪界では本ドラとは別に常に二筒がドラ(自転車の車輪に見立てて)とか書かれてあり、「ドラがいつも多いので、手を作るというよりはドラ集めみたいな麻雀」と締めくくられていました。

 現代の麻雀も似たようなものですね。いまはどこの麻雀屋さんに行っても赤牌がありますから。

 僕が麻雀を覚えた高校生のころ、裏ドラはすでにありました。覚えるために買った初心者本にも裏ドラのことは書かれており、当然そのルールを採用して打っていました。

 まわりの高校生も当然裏ドラあり。上京してから行ったフリーの店、どこも当たり前のように裏ドラはありました。

 しかし、昭和の時代に「競技麻雀」と呼ばれた大会などはほとんど裏ドラ(槓ドラも)一発なしのルールでした。

 僕がこの世界に入って長らく在籍した「順位戦101」と「最高位戦」は裏ドラ一発なし。さらに双方ともアガリ連荘でノーテン罰符なしというルール。ここまでストイックではなくても、101入会以前に参加した学生麻雀選手権、王位戦、サンケイスポーツ主催の通称サンスポ杯、どれもこれも裏ドラ一発なしのルールでした。このうち、王位戦は主催が日本プロ麻雀連盟に変わって現在も続いていますが、相変わらずのナシナシルールです。プロ連盟のAルール(リーグ戦のルール)がこのルールであることも関係しているでしょう。

 いま、思い出しましたが、昭和の時代にテレビで麻雀を放映していた「11PM」金曜日の通称イレブン麻雀、あれは一発はあるけれど、裏ドラはないというルールだった。故・大橋巨泉さんがルールを決めていて、「一発は安全牌を持つ訓練になるけれど、裏ドラは予測できないから」ということだったと記憶しています。

 自分の団体(日本プロ麻雀協会)が裏ドラを採用しているのに、こんなことを書くのは少々無責任のような気がしますが、裏ドラ一発なしルールのほうが勝っても負けても納得がいくし、打っていてやりがいを感じます。昭和を30年も生きたからでしょうか。

 まあ、ともかく、本ドラは最初から見えているのでまだいいのですが、槓ドラや裏ドラがまとめて乗って、簡単にハネ満、倍満ができるのは、配信等で見せる麻雀としても面白いのか、と疑問に感じます。

 赤牌まで入っていると、ハネ満、倍満のハードルはさらに下がりますしね。ドラの種類が増えると、手役の価値が相対的に下がって、手作りの面白みが半減すると思いませんか?

 

 ドラの倍々ゲームを変えてみませんか?

 

 裏ドラどころか、本ドラそのものもない麻雀があります。

 日本最古の麻雀団体「日本麻雀連盟」は日本に麻雀が伝わったころからのルールを守っており、現在では「アルシーアル」と呼ばれるルールですが、世の中にリーチ麻雀が流行っていったため区別するためにこう呼ばれるようになっただけで、本来はこちらの方が日本麻雀の元祖です。

 また、本場中国でも、花牌は使用されてもドラというものはない。現在はネット麻雀の普及で日本式の麻雀をやる層が増えているでしょうが、ドラはそもそも太平洋戦争後にルールがインフレ化していく過程で懸賞牌として考えだされたというのが通説で、日本人が生み出したものです。まあ、なにが言いたいかというと、ドラがなくても麻雀になるのです。

 そういえば、以前、ドラなしでブー麻雀を打ったことがあったなぁ。ブー麻雀とは、誰かが満貫分浮くか沈むかで決着するルールで、100点でも沈んでいる人が負けになるという麻雀です。トップになるほうからすれば、3人沈み(通称マルA)が最高です。

 麻雀企画集団「バビロン」の連中とやったのですが、誰かが「ドラなくしたほうが読み合いになってより面白くなるのでは?」というので試したのですが、ドラなしだと高くするには手役が必要。ブーは満貫浮きに達するための手を作ろうとするので、なおさら読みの要素が深くなって実に面白かった。

 ただし、東1局に満貫ツモって「はい、マルA」となるようなブー麻雀特有のスピード感はなく、ジットリ、ネットリとした麻雀で、えらく疲れましたが。

 まあ、ドラなしのルールにするなど、平成以降の人たちには考えられないというか、「そんな麻雀やりたくない」と思う方々が多いのではないでしょうか。

 そこでひとつの提案です。ドラを手役と同じように倍々計算にするのではなく、加点方式にしたらどうでしょうか?

 加点方式とは、1本場300点のように、アガリ点に足していく方式です。ツモったときのために3で割れる数字でなければなりませんが、300点では安いというなら、600でも、東風戦のように1500点でも構いませんが、個人的には600点くらいが妥当かなと思っています。

 これでも、オーラス3000点差の2着。役も何もない手をテンパイ。ツモって500・1000では届かないと思っているところにドラ三筒をツモって四筒五筒六筒のメンツをスライドさせてリーチ、ツモって逆転トップというような駆け引きの面白さは残ります。

(編注:相手は子方で500・1000ツモでは2500点しか縮まらず届かないが、600点のドラが1枚あることにより、700・1200となり、3300点差が付き逆転する。また、直撃の場合も1300+600で1900×2=3800点で逆転することが出来る)

 

 加えて、これなら手役の価値を損ねることなくハネ満、倍満のハードルは下がりません。

 僕自身、こんなルールでやったことはありませんが、どなたか一緒に試してみませんか?