土田浩翔の競技一筋45年 第4回 「ゲーム時間を短縮する方法」 

土田浩翔の「競技一筋45年」

 動画での放送対局が激増するに従い、対局時間が長くなると視聴者離れが起きるのではないかという声が聞こえてくるようになりました。

 囲碁・将棋と比較するのはナンセンスだと思っていますが、1局が11巡平均で終わるとして、4者で44手かかります。さらに半荘が11局平均で終わるとして、総手数480手余りかかるゲーム。

 1手に10秒かけると、摸打だけで4800秒、つまり80分要することになります。

 点棒授受や配牌を取る時間(自動配牌であれば、親の第1ツモだけですが、放送対局では理牌する時間も加わってきます。

 摸打にかける時間が5秒以内の対局であれば、80分の半分の40分程ですが、それ以外にかかる時間をプラスすると、50~55分で1ゲームは終了するはずです。

 打つ側の観点ではなく、観る側の観点だけで考えると、1ゲーム1時間あたりが面白さを持続させるポイントになっているように思うのは私だけでしょうか。

 もちろん、打つ側にも言い分はあります。

 摸・打の所作にはプロ団体・競技団体特有の決まりごとがあって、上家の打牌が完了してから摸行為に入ることですら、規則の違いがあり、ひいては摸打の所要時間がそれだけで2秒くらいの差が出ています。

 2秒×480手⇒960秒⇒16分ほどの差が団体によって出ているのが現状です。

 この時間は、摸打以外にかかる時間ですから、いかにも競技的に思えます。

 

 ファンに飽きずに観戦して貰うにはどうすればよいのか? という命題は、麻雀競技に限らず与えられているもので、直近では大リーグにおける投球時間の改正(来年度から施行)が話題になっています。

 

 ランナーがいるときといないときでは5秒くらいの差はありますが、現行の投球に要する時間を短縮せよという改正です。

 この改正に従うと、今年までの大谷やダルビッシュの投球に入るまでの所要時間ではペナルティーが課せられるとのこと。

 一流プレイヤーがその一流の技を存分に発揮するために要する時間ですら、観戦するファンの側に立って改正していく意義を麻雀競技(とくに放送対局)に携わる関係者は考えたほうがよいと思っています。

 選手目線ではなく、ファン目線で規則を考えていく時代が来ているのではないでしょうか。

<私の提言>

○摸打に要する時間を10秒以内とする

○長考は1ゲームに3回までとする

○摸に入るまでの時間は1秒以内とする

 

 選手の時間を制限するということは、当然のことながらタイムキーパー役の審判を配置するということに他なりません。

 とりわけ放送対局には、主審と副審をおいて、副審が時間管理する役割を担います。

 5秒を過ぎたら、警告音のチャイムを鳴らし、10秒経った時点でブザーが鳴り、ツモってきた牌をそのまま河に切るという規則にしておけばよいのではないでしょうか。

 6・7・8・9と4回警告音が鳴りますから、選手も覚悟をもって打てるはずです。

 ペナルティーとしての強制ツモ切りも、ネット麻雀では普通の話ですから(時間オーバーの措置として)違和感はないと思います。

 

 長考の許容は1ゲームに3回としたのは、将来的にすべての摸打を10秒以内とするための暫定期間ゆえの特別措置です。

 10秒以内で摸打するトレーニングを積めば、プロは順応していけるはずで、慣れるまでは1ゲームに3回くらいは長考できるという規則にしておきます。

 そしてその長考時間は30秒とします。

 選手は長考カードなるものを卓上に提示して長考に入り、25秒を過ぎると警告音が鳴り、30秒でブザーが鳴ってツモ切りするという仕組みになります。

 長考カードは、最初の警告音がなってから提示してもよいし、鳴る前から提示しておいても問題ありません。

 

 10秒以内で摸打せよとか、長考は1ゲームに3回まで(それも30秒以内)とか、選手の能力をフルに発揮させない改悪案ではないのか? という声も当然上がるでしょう。

 では他の競技に目を向けてみて下さい。

 選手の声を集約して(あるいは顔色をうかがって)、ファンの喜ぶ改革ができるものでしょうか?

 与えられた規則に則して能力を磨いていけるのが真のプロなのではないでしょうか。

 大谷やダルビッシュが時短に反対の声を上げているでしょうか?

 その件についてインタビューを受けていましたが、投球リズムが狂いそうだとか、打者との駆けひきに問題が生じるだとか、専門的な反論は一切なく、その時間内で投げるトレーニングを積むとだけ答えていました。

 やはり彼らは一流、いいえ、超一流プレーヤーだけのことはありますね。

 

 摸行為に入るまでの時間は1秒以内と定めたのも、この規則があれば、選手の時短への意識が高まると思えたからです。

 上家の打牌を意味ありげにマジマジと見つめたり、マナー遵守とばかりに間を置きすぎたりすることを時間の制約で無くしていこうと考えました。

 この規定へのペナルティーは、1~2回はイエローカードを副審が出し、3回目はレッドカードを主審が出し、レッドカードの選手にはペナルティーとして△3000点が課せられる仕組みがよいのではないかと考えます。

 この△3000点は、1人ノーテンで支払うポイントと同じです。トータルポイントから1ペナルティーごとにリセットされるものとします。

 

 放送対局が増えた昨今、見せるから観せるへ、観せるから魅せるへ、作り手も選手も意識改革の必要に迫られていると思っています。

 思いつきに近い提言なのかもしれませんが、対局時間の短縮は早急に解決したほうがよいテーマなのではないでしょうか。