マージャン競技を考える<第1回>

 筆者が「競技麻雀」を始めたのはかれこれ45年前のことでした。その時は麻雀そのものにもほぼ初心者といって良いレベルだったので、ルール・システム、そして「競技麻雀」という言葉も丸ごと受け入れて取り組んでいました。
 それから10年以上の歳月が過ぎたある時、「陸上競技」とは言うが「競技陸上」とは言わんよな、とハタと気が付きました。

「競技麻雀」と「麻雀競技」

 「競技麻雀」は「賭け麻雀」の対義語として生まれた言葉だったのです。使われているルールはほぼ同じ、大きな違いはとても厳しいマナーを守って対局するということでした。麻雀は賭け事として発展してきた歴史があり、ルールにもそれが色濃く残っています。
 満貫までは役一つで得点が2倍になりますが、その次は役が二つ増えても1.5倍(ハネ満)にしかならないというのはその象徴的な例です。
 そもそも得点のリミットであった満貫では、様々なインフレーションが収まりきらず、かと言って2倍原則を貫けばあまりに極端な結果が生じるというジレンマのなか、あくまで賭けを楽しむさじ加減として決められたルールのように思えてなりません。

オリンピック承認種目への道

 もともと賭けマージャンしかなかった中国で1998年にMCR(Mahjong Competition Rule)」が誕生し、それがMIL(Mahjong International League)の組織、さらにIMSA(International Mind Sports Association)加盟への道を拓きました。
 MILの中心メンバーはMCRだけではなく「リーチ麻雀」もオリンピックの承認種目にしたいと強く望んでいます。
 本家の日本で競技を続けている我々も、自分たちが使っているルール・システムをシビアに見直す潮時ではないでしょうか。問題点を見出し、その解決法を探っていくのが本連載の目的です。

5名の執筆陣

 また、筆者以外に土田浩翔さん(一般社団法人最高位戦日本プロ麻雀協会特別顧問)、五十嵐毅さん(一般社団法人日本プロ麻雀協会代表)、園田賢さん(赤坂ドリブンズ・最高位戦所属)、逢川恵夢さん(日本プロ麻雀協会)にも麻雀競技にテーマを絞って執筆をお願いしました。
 本日アップする五十嵐さんを先頭に、週1回ぐらいのペースで各執筆者の原稿を上げていくつもりです。
 ちなみに土田さん五十嵐さんと筆者は同学年、特に五十嵐さんとは順位戦101(現一般社団法人日本麻雀101競技連盟)の同期でもあります。そんな五十嵐さんとの新連載の打合せがきっかけになり、はやくも現実が動く可能性が出てきたのは嬉しいかぎりです。
 土田さんはもともとルール・システムについてとても柔軟な考えの持ち主で、彼の提言でねんりんピック(厚生労働省主催)や国民文化祭(文化庁主催)の麻雀大会がサイコロ不使用になったということもありました。
 園田さんもその初めての著書「魔術の麻雀」の中で「(前略)麻雀は賭場の文化から発展してきたゲームです。現在はギャンブルとしてではなく、ゲームとして、またプロの世界では競技として発展してきていますが、さまざまなところにその名残があります。より多くの人が楽しめるゲームにするためにはその名残をどうするのかを考えていかなければなりません。」と書き、具体的な提言をしています。
 逢川さんはもっとも最近知り合った方ですが、現下、女流最強の一人としてどんな発言をしてくれるのかたいへん楽しみしています。

 麻雀を楽しまれる皆さんが一人でも多く、こんな考えもあるんだねと関心を持っていただけるように連載をスタートいたします。