麻雀きょうぎ 第10回 見せ牌について

 今回は「見せ牌」について考えてみたいと思います。

 見せ牌とは、本来は相手に見せていないはずの手牌の一部が、なんらかのアクションでパタンと倒れて対局者に見えてしまうもの、または晒し間違いを訂正したりしたときに、見せてしまった牌を言います。

 ヤマ(壁牌・ピーパイ)の一部がポロリとこぼれて見えた牌のことも見せ牌といいます。これも問題がないわけではありませんが、まずは「手牌からの見せ牌」に限って考えてみます。

 競技性を損なう行為

  麻雀は、囲碁や将棋のようにすべてが見えている状態で次の一手を考えるゲームではありません。シークレットとなっている部分を推理して進めていくゲームです。

 シークレットとなっているのは手牌、まだ積まれた状態で残っているヤマ。

 巡目が進むうちに、表になって並べられていく捨て牌が増え、裏返しで積まれたヤマが短くなってお互いの読みの要素が増えていくわけです。

 ともかく、見えないものは見えないままで推理しあうのが麻雀というゲームなので、見えていない牌が一牌でも見えることによって著しくゲーム性を損ねることがあるわけです。

 こんなことは、麻雀という競技を真剣に考えている人にとっては当たり前のことなのですが、では見せ牌に対してどのようなペナルティを課すべきか、となると難しいのです。

 

 競技の場ではなく、一般的にはどうか? フリーの麻雀店などで考えてみましょう。

 フリー麻雀店でも、見せ牌は当然問題ある行為としていることが多いようです。

 初心者大歓迎というか、粗相に対して甘めのお店も数多くありますが、ペナルティを課す店も少なくない。

 ペナルティとはいっても、誤ポン、誤チーのように「罰符千点」とかではなく、見せ牌ではアガれない、ポンはできないといったものが多いようです。

 これは、見せた牌でアガるのは卑怯といった感情論もあるとは思いますが、わざと振り込む者が出ることを危惧してということもあります。

 いまどき阿佐田哲也の小説に出てくるようなコンビ打ちはないでしょうが、トップ目が親に連荘されるよりも安手に早く振り込みたいと思っているオーラスに、1000点アガれば3着に浮上するラス目が仕掛けて、明らかにタンキ待ちと思われる牌をこぼして見せてしまったら?

 この瞬間は推理するゲームではなくなってしまいますよね。これでトップ目が「はいどうぞ」と振り込んだら、ラスに落とされた人はもちろん、連荘したかった2着目からもクレームがつくでしょう。

 また、同じような局面で、安手でアガりたい人が役牌を倒し、トップ目がわざと鳴かせてしまったら、これもクレームがつくでしょう。

 フリー雀荘でのペナルティは、こうしたゆがんだゲーム進行と、それに伴う客からのクレームを避けたいという思いがあるからです。

 牌を扱う熟練度が問題

 では、競技の場ではどうか?

 競技の場では、見せ牌に対するペナルティがなく、当事者が「失礼しました」と謝罪してそのまま局が進行することが多い。見せ牌に対するペナルティをはっきりとルールに明記しているプロ団体はありません。

 そもそも競技では誤ポン、誤チーも千点罰符ではなくアガリ放棄。アガリ点、供託棒、積み棒などの正当な点棒のやりとり以外を極力避けます。

 この方向で考えると、見せ牌もアガリ放棄になりそうですが、アガリ放棄者が一人出ることも正当なゲーム進行を損ねることに変わりはありません。誤ポン、誤チーとちがって牌をひとつこぼしたくらいではそこまで罪は重くないといったところでしょうか。

 ただし、3枚も4枚も倒したら、これはゲーム続行不可能として、アガリ放棄どころかチョンボになる可能性があります。このあたりは立会人の裁量に任せられます。

 複数枚見せ牌をしても、その牌がそれほど重要と判断されなかったりすれば、立会人から注意されるだけでゲームは続行するでしょう。また、3人リーチを掛けている局面で、残る一人が見せ牌を何枚してもその局の結果に影響は出ませんね。立会人の裁量に任せられるとは、そういうことです。

 なお、競技でのチョンボは点棒をやりとりするのではなく、当人のトータルポイントから規定のペナルティポイントを減らされるというのが現在の主流です。

 その半荘の順位争いに極力影響を与えないようにするためです。ペナルティでトータルポイントを削られた分、ただのトップではだめ、大トップが必要といったことになるかもしれませんが……

 

 見せ牌はいってみれば粗相です。これはやはり牌の扱いが未熟な者に多い。

 自団体の恥を晒すようで心苦しいのですが、下位リーグの立会人をやっていると、粗相ばかり目にします。

 ポン・チーの際に、晒す牌の隣の牌をこぼしてしまう。手牌ばかりでなく、ヤマの牌をこぼすことも多い。配牌の取り出しのときなど危なっかしい手つきです。

 下位リーグでも、ベテランや雀荘勤務の者は粗相がほとんどない。

 やはり、普段はネット麻雀ばかりという選手に粗相が多いようです。

 彼らは協会の筆記試験で受かっていますから、牌効率に沿って手を進めるなどの技術がヘタというわけではありません。しかし、打っている姿勢だけで判断するならば、まるで初心者のような者もいます。

 もうこればかりは仕方ない。

「一牌でも見えることによって著しくゲーム性を損ねることがある」このことを肝に銘じてリアルの麻雀に慣れてもらうしかありません。

 先にも述べたように、一牌見えただけでペナルティを課すのは厳しすぎるでしょう。しかし、頻繁に牌をこぼしてしまう人には再研修を課すとかは考えています。

 だいいち、プロを名乗っていて牌の扱いがヘタなんて格好悪いじゃないですか。それではファンが付かないでしょう。

 皆さんもそう思いませんか?